タバコの警告文を見た人の脳で、何が起きているのか。

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どもども。森山大朗です。

今日はちょっと、堅めの文章です。自分は脳科学の専門家ではありませんので、ここに書いてある内容は脳科学の分野で公式に行なわれた臨床実験と、その文献を基にして書かれた書籍からの引用ということになります。予めご了承下さい。

先日、ワクワクマーケティングの小阪さんと、代表の安田との対談【前編】を公開しましたが、「面白かった」。「はやく、続きを読ませてくれ」とのお声を頂いています。ありがとうございます。

現在、小阪先生が学会の発表でフランスに出張中なので、原稿チェックの返事待ちです。もう少々お待ち下さい(汗)

さて、今回対談の中で掘り下げているテーマは主に


「脳に不況は、ない。」ということです。



好むと好まざるとに関わらず、私たちはすでに感性マーケティングの世界に足を踏み入れてしまっています。

人間がお金を使うという局面において、人間の脳がどう作動しているかを理解することで、商売について、もっと工夫のしがいが出てくるということです。


では「感性」とは何か。小阪さんの言葉を借りるのであれば、


感性=脳の高次情報処理


という意味で用いています。

「高次」というのは、レベルが高い低いという意味ではなく、
「複雑」という意味で用いています。
複雑という言葉はマイナスの意味でも用いますが、ここではプラスの意味です。

複雑な処理というのは「複眼的」「多面的」という意味であり、より多くの要素を、より多くの角度から検討して、総合的な結果を出すということです。脳は、それを一瞬でやってのけます。

ですので、なんか直感的に欲しくなっちゃったから買うーーといった単純な話ではありません。その逆・・・というか、この「直感的に欲しくなった」というプロセスそのものは、実は非常に複雑だ、ということです。

脳は、無意識に作動しています。

そして、脳の中では常に感情>理性であって、その比率は決して揺らぐことがありません。

小阪さんの研究分野である、神経経済学(ニューロエコノミクス)では、実際にfMRIという装置(病院でCTスキャンを撮るあれです)を使って脳の断面図をスキャンし、ある外部からの刺激によって、脳のどの部位が発火したか(電気的な信号が流れたか)という脳内で起こっている物理的な現象を観察します。


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(Wikipedia「fMRI」より)

感情というのは時として非常に不合理なふるまいをするので、かなり意外な結果がでることも珍しくないそうです。

それを示す、大変わかりやすい事例が「タバコの警告文」です。

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※Wikipedia 「タバコ警告表示」より

■喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなります。疫学的な推計によると、喫煙者は肺がんにより死亡する危険性が非喫煙者に比べて約2倍から4倍高くなります。

■喫煙は、あなたにとって心筋梗塞の危険性を高めます。疫学的な推計によると、喫煙者は心筋梗塞により死亡する危険性が非喫煙者に比べて約 1.7倍高くなります。

■妊娠中の喫煙は、胎児の発育障害や早産の原因の一つとなります。疫学的な推計によると、たばこを吸う妊婦は、吸わない妊婦に比べ、低出生体重の危険性が約2倍、早産の危険性が約3倍高くなります。

■たばこの煙は、あなたの周りの人、特に乳幼児、子供、お年寄りなどの健康に悪影響を及ぼします。喫煙の際には、周りの人の迷惑にならないように注意しましょう。

■人により程度は異なりますが、ニコチンにより喫煙への依存が生じます。


これまで、のべ2000人を動員して行なわれた、消費行動と脳との関係を探る脳波測定プロジェクトの結果から得られた知見をまとめた本、「buy・ology ~Truth and Lies About Why We Buy~」(邦訳名「買い物する脳」 マーティン・リンストローム(著)千葉敏生(訳) 早川書房)を読むまでは、このタバコの警告表示について、

「世の中的に、喫煙者の立場が弱くなっていってるなー」
「自分が売る商品に、警告文をつけなければならないなんて」
「こんな表示だらけのパッケージを見たら、喫煙者も萎えるよな」
「じっさい、売上とか減ってるんだろうけど、JTさん大丈夫なのかな」

という風に思っていました。

※あ、ちなみに僕はここ5年ほど、自分ではタバコを吸っていません。人から勧められて吸ったことはありますが、続きませんでした。ここ2年くらいはもうタバコの匂いがするのが嫌で、そこに長時間は居られなくなっています。

米国を中心とした行き過ぎた健康志向を背景に、喫煙の害を理由として「喫煙者=人でなし」というレッテルを貼る狂信的な団体がいます。彼らが圧力をかけまくっているのだろうな・・・と。

これじゃあ、吸う気も失せるよなーと思っていたわけです。はい。元喫煙者としては、同情してしまうというか。。。

実際、この本で描写されているfMRIの実験では、実験前の段階で普通にタバコの警告表示を見せたスモーカーの被験者に「この警告表示には、効果があるか」という質問を投げかた際、大半の人たちが「はい」にマルを付けています。

もちろん、本当にそれが正しいと思ったのかもしれないし、研究者が望む回答を答えたのかもしれません。


しかし、ですよ。


ところが、ですよ。


その後、fMRIで脳を観察してみると、タバコの警告文は明らかに、「欲望のスポット」と呼ばれている側坐核という脳の領域を、逆に刺激していたという結果が得られているんです。


要するに、


「タバコを吸うな、危険だ、病気になるぞ」と書けば書くほど、逆にタバコを吸いたくなる。


という結果が、この脳科学の実験から得られる真っ当な仮説なんです。

ほら、アンケートとは違う結果になってますよね。

人間が、意識のレベルで質問に回答したのとは、真逆の反応を示しているということです。しかも、本人にはウソをついたという意識はない、と。

参りましたねー。

僕が同情しかけていたタバコ会社が、仮にこのことを知っていて警告表示を載せているのであれば、大したもんです。(ちょっと怖いですけど)

そして、団体の方も、そうとは知らずにヒステリックに「タバコの警告表示を!!」と叫んでいるのだとすれば、実験結果を踏まえて行動を変えるべきですね。

文字情報は、視覚から入ってきて無意識に影響を及ぼし、人間の行動を動機付けます。

そして、日本人の感性の高さ(=複雑さ)は、世界でも随一。

複雑な情報処理としての消費行動を正しく捉え、適切な動機付けを行なっていくには、お客さんに直接聞いていたのでは、ラチがあきません。


それどころか、逆の回答を導き出してしまう可能性もある、ということを改めて教えてくれる気がします。

かなり長いので、今日はここまで。

ブランドについての実験も掲載されていましたので、この続きは次回、書きますね。





森山大朗 on twitter


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